コミュニケーションの目的
コミュニケーション能力の高い人は話が上手な人というイメージがあります。
立て板に水のごとく、よどみなくお話が出来る人を想像します。
でも、コミュニケーション能力が高いということとおしゃべりが上手ということは必ずしもリンクしていないようです。
話し上手でなくてもコミュニケーション能力を上げる方法があります。
それは、相手とラポール(信頼関係)を築くことです。
信頼関係は長い期間かけて築くものと思いがちですが、初対面の人とも短時間でラポールを築くことは可能です。

コミュニケーションは相手に話を正確に伝えなければならないものだと考えます。
そのためには、論理的に筋の通った話をしなければならないとも考えます。
もちろん話す内容は大事です。
ですが、そもそも人間は、話を聞くときに好きな人が言うことは聞くけれど、嫌いな人が言うことは聞きたくないという側面を持っています。
筋の通ったいい話をしているとわかっていても、それを嫌いな人が言うと何か抵抗があり、自分の中に入ってこないということが起こります。
何を話すかも重要ですが、誰が話すかという視点も大切になってきます。
身近でよく知っている人と話す場合と初対面の人と話す場合は、前者との会話が抵抗なくできるのではないでしょうか。
身近でよく知っている人は安心感があります。
信頼関係ができていればなおさらです。
コミュニケーションは相手に自分が発するメッセージや情報を受け取ってもらわなければ、目的を果たせません。
相手に自分の言葉を受け取ってもらうことが重要です。
言葉は相手に受け取ってもらえてはじめて相手に影響を与えることができるからです。
先程もいいましたが、人間は好感を持てる人の言うことは素直に受け入れることができます。
しかし、嫌いな人の言うことはそれが正しいと頭では理解できても、素直に聞くことができません。
頭(意識)では理解できても無意識が拒絶してしまうのです。
コニュニケーションは「正しいこと」や「すばらしい内容」を話すことが大事と言えば大事なのですが、話す内容を相手が受け取らなかったらコミュニケーションの意味がありません。
まずはじめに、相手に自分の言葉を素直に受け取ってもらえるかどうかがコミュニケーションの前提となります。
ラポールが大事
コミュニケーションをうまくやるには、相手との信頼関係が大切です。
相手が自分の言葉を受け取ってもらえるかどうかは、相手とのラポール(信頼関係)があるかにかかっています。
私たちは初対面の人とはすぐに信頼関係ができないから、コミュニケーションは難しいと考えてしまいます。
しかし先ほど言いましたが、そうとは限りません。
人間は安全を重視します。
初対面であったら特に、相手が自分にとって安全で安心できる存在であるかが重要になります。
安心感を相手に持ってもらえれば、コミュニケーションがうまくいきます。
初対面の人とどうやってラポール(信頼関係)をつくるのかという疑問がでてきます。
過去、初対面だったが、話がはずみ意気投合した経験があるという方がいらっしゃると思います。
どうして初対面で話が盛り上がったかというと、出身地が一緒だった、学校が同じだった、共通の友人がいた、趣味がいっしょetc、ということがきっかけになったのではないでしょうか。
共通点が見つかって、一気に心が開いてその人が旧知の友のような感覚になったという経験があるかと思います。
人間は自分に近い人に安心感を持ちます。
「近い」というのは物理的な距離と心理的な距離です。
「近い」要素がより多く見つかれば、相手との距離がぐっと縮まります。
共通点が多いほどお互いが共感し合い、自分と同じという感覚になります。
相手は私と同じだという感覚になれば、相手を信用できるようになります。
まず、質問によって共通点を見つけていくことがポイントです。

ミラビアンの法則
メラビアンの法則を聞いたことがあるのではないでしょうか。
人間は他人とコミュニケーションを取るとき、言語はもちろんですが、言語以外に聴覚、視覚からの情報に影響を受けるという法則です。
言葉の影響は7%、話し方の影響は38%、ジェスチャーの影響は55%といわれます。
言葉以外の非言語によるコミュニケーションが人に大きな影響を与えることがわかります。
聴覚、視覚に訴えるものは相手に与える影響が大きいのです。
人間には「意識」と「無意識」があります。
無意識は安全・安心を感じたときに心を開きます。
非言語によるコミュニケーション、つまり無意識がコミュニケーションに大きく関係するのです。
ペーシングでラポールをつくる
最初にラポール(信頼関係)をつくることが大切だと書きました。
ラポールはペーシングによってもつくられます。
ペーシングは相手に合わせることです。
1.話し方を相手に合わせる方法
声のトーンや声の大きさ、スピードを相手に合わせるのです。
一つでもいいので相手に合わせてみてください。
相手が声の大きい人だったら、大きい声で話す。
早口であれば早く話す。
テンポをあわせてみるのです。
テンポが違うと違和感が生まれます。
早口とゆっくりの話し方ではお互いぎごちなさを感じ、ラポールができにくいといえます。
声のトーンを合わせてみます。
落ち着いたトーンであれば落ち着いた口調で話すようにします。
全部あわせるということはむずかしいと思いますので、一つでも合わせるようにしてみてください。
2.表情やジェスチャーを相手に合わせる方法
相手が笑っているときは自分も笑います。
相手が笑っているのにこちらが硬い表情だったら、遠い感覚になります。
カフェで話をしているとしたら、相手がコーヒーを飲むとき自分もカップに手を掛けて飲むというようにしぐさを真似てみます。
ぴったり同時に真似をするというのではなく、さりげなくやることをおススメします。
真似されているとわかったら、不快になる人もいますので、やり方に注意が必要です。
足を組んでいるのなら、同じ格好でなくても足首を交差させるとか、腕を組んでいるのなら、全く同じでなくてもいいので、片方の腕のひじをさわるとかします。
話し方や表情、身振り手振りを相手に合わせることは難しいと感じるかもしれません。
ですが、自然に私たちは行っていることに気づくでしょう。
大人が幼い子に話しかけるときは、しゃがんで相手の目線に合わせて話しかけています。
やさしく、声は高めに、ゆっくりしたトーンで、簡単な言葉で話しかけていると思います。
大人に対して話す時とは違う口調になっている、そういう経験がおありだと思います。
話し方と表情やジェスチャーを相手に合わせると初対面でもラポールを築けるといえます。
3.呼吸を合わせる方法
もう一つペーシングで有効な方法は、呼吸を合わせるという方法です。
相手の呼吸のスピード、テンポを真似るということです。
相手をよく観察し、呼吸のペースを合わせてみてください。
親近感がわく感覚がありますので、やってみることをおススメします。

最後に
コミュニケーションの成果は、相手にどれだけこちらの言葉を受け取ってもらえたかということになります。
こちらの主張が正しいとしても、信頼関係のない相手の話は素直に心に入ってきません。
人は、安心・安全を感じる相手にしか心を許さないのです。
人間は正しいコミュニケーションではなく、安全なコミュニケーションを求めています。
初対面や特に力を入れたい相手とのコミュニケーションでは、ラポール(信頼関係)をつくることが大切です。
そのためには、質問によって共通なものを見つけること、そしてペーシングをやってみるということです。
相手が自分と同じだということがわかると親近感を覚え、心を開きます。
「私は安全な存在である」ということを理解してもらうために、「相手に合わせる」ペーシングをやってみてはいかがでしょうか。
関連記事:初めて会う人との会話:ラポールの築き方~信頼関係を作る質問の仕方
お読み頂きありがとうございました。