習慣の肯定的意図
私たちは、生活の中で毎日同じことをやっていることがたくさんあります。
朝起きて、顔を洗う、歯を磨くという習慣は物心ついた頃からのものです。
何の疑いもなく毎日やっています。
改めて、習慣とは長年繰り返し行ってきたことであり、そうすることが決まりのようになったものです。
習慣となっていることはそれをやろうと決意してやるものではなく、無意識のうちにやっているものです。
朝、顔を洗おうと決意してどういうやり方でやろうかと思い、顔を洗う人はいないでしょう。
行動することに抵抗がなく、無意識にやるものが習慣です。
習慣は同じ行動の繰り返しによって出来上がるものです。
初めてやるときは、行動の目的とやり方を意識したはずです。
例えばドアを開けるという行為をとってみます。
普段考えることもなくドアを開けています。
例えば未開のジャングルに住む人でドアというものを知らない人がいたとします。
その人がドアのある家の中に入りたい場合、ドアそのものを見たことも触ったこともないのですから、どういうものかも分かりませんし、どうやったらいいのかもわからないでしょう。
家の中に入りたいとしたら、ドアをたたくとか壊すとかするかもしれません。
それがドアノブを手で握り右に回し、ドアを押す(または引く)と開くと教えられたら、見よう見まねでやってみるでしょう。
ドアを開ける回数を重ねることにより意識せずできるようになっていきます。
行動するには、まず動機があります。
ドアを開ける行為には、次のような動機というものがあるでしょう。
中の人に用事があるとか部屋の中で何かやることがあるから、そのためにドアを開けて入るという意図があります。
習慣化していくと、行動のやり方もそうですが、その行動が持つ意図も意識しないようになります。
行動の意図が無意識の領域に入り、意識されなくなります。
日常、家で強く意識することはほとんどなく、何気なしドアを開けることが多いでしょう。
悪習慣といわれるものにも、その行為の意図があります。
その意図というのは習慣となっているため意識されません。
悪い習慣の意図を探っていきます。
そして、その肯定的意図を尊重しつつ行動を変えるというのが、悪い習慣を断ち切ることにつながります。
快と痛みの法則
脳は「快」を求めて「痛み」を避けるという特徴があります。
「痛み」は怪我、病気など物理的な痛みとストレスなどの精神的な痛みがあります。
どちらも人間が生きながらえるという観点では避けたいものです。
身体が痛いとか苦しい状態は嫌ですし、精神的にも辛い状態は嫌です。
ですから、脳は痛みを感じたくないので、痛い、苦しい、辛いことはしない、あるいは避ける行動を取ります。
反対に「快」という喜び、幸福感などの快感に繋がる思考や行動は好きです。
ワクワクした状態や幸福感を感じるものを経験したいと思います。
「快」に結び付ければ、脳は活性化し高いレベルで働いてくれます。
なぜ、人は快を求め痛みを避けるのでしょうか。
それは安全を求めているからです。
肉体的痛みや精神的痛みは人の生存にとってはマイナスです。
それよりも楽しさや幸福感を持つ方が安心・安全が得られます。
「快」を感じている時間が長い人の方が長生きするといわれています。
同じ出来事でもそれを「快」につなげている人もいれば、「痛み」に結び付けている人もいます。
人によって快と痛みの捉え方は違います。
同じ出来事でも快に感じる人もいれば痛みに感じる人もいます。
犬好きの人は犬は「快」ですが、犬恐怖症の人にとっては「痛み」となります。
悪習慣の肯定的意味
どんなに否定的に見える行動の中にも、NLPでは「肯定的意図」があると考えます。
例えば、毎月毎月、たくさんの服やバックをカードで買ってしまう女性がいます。
支払いで困窮するという状態になるまで買い物を続けてしまうのです。
その女性は、幼い頃両親が共働きで子どもにかまってやる時間がなかっため、親がお金を与えていたといいます。
彼女に好きなものを買わせていたという過去がありました。
大人になってからも支払いも考えないでバク買いしてしまう行為は変わらず、習慣となっていました。
彼女いわく、買い物をしていると小さい頃の両親の「愛情」を感じられるというのです。
浪費グセの悪い習慣を持っていて、直したいと思っているのですが、わかっているけどやめられない状態です。
彼女は買い物をしていると親の愛情が感じられて、幸せな気分になるからでした。
NLPでは、どんなに否定的に見える行動にもその人にとって肯定的意図があると考えます。
無意識の領域にその肯定的意図があります。
意識に上らないので普段はわかりませんが、行動の動機は、肯定的意図から始まっているのです。
その肯定的意図を知ることで悪習慣を改善することができると考えます。
その行動の持つ肯定的意図を満たしつつ、別な行動に変えると悪習慣を変えることができます。
悪習慣を変える方法
直したい習慣があったら、ゆっくりと時間を取り静かな環境で、次の順番に従ってワークをしてみて下さい。
1.やめたい、改善したい否定的な行動を特定します。
2.その行動をしている自分を想像してどんな感覚かどんな感情があるか体感します。
3.その強く感じる感覚に意識を向けて、「そのことで何を私は得ているか?」自問します。
すると頭に浮かぶ言葉が出てくると思います。
考え込まずに、直感的に出てくる言葉に注目します。
その答えが、「愛情」、「認められたい」、「健康」、「きずな」、「やさしさ」、「成長」、「安心」、「安全」、「自由」、「やすらぎ」‥‥と出てくるかもしれません。
これらは、やめたい習慣が持つ肯定的意図です。
悪習慣を変えるには、今やめたいと思っている習慣を別な習慣に入れ替えるという方法を取ります。
悪習慣の中にある肯定的意図を持つ別な行動を取るということです。
例えばやめたい習慣が「遅刻」であったら、その肯定的意図が「安心」だとします。
安心の感覚を感じられる別な行動を取ることです。
「安心」を感じる行動をいくつか思い浮かべてみます。
例えば「親とZOOMで話す機会を定期的に取る」だったら、それを行動に移してみます。
散歩に安心感を持つのなら、時間を決めて散歩を始めてみます。
どちらも、やめたい習慣が持つ「安心」を満たしている行動です。
今やっているやめたい行動を、自分が「安心できる」別な行動に変えてみるのです。
肯定的意図が「やすらぎ」であれば、やすらぎを感じられる行動をいくつか思い浮かべ、新しい行動を始めるということです。
古い、悪習慣は新しいポジティブな行動に入れ替えることができます。
やめたい習慣をやめるとそこに空白できますので、その空白を埋めるために新しいポジティブな習慣を当てはめるというイメージです。
人は安全を求めています。
生命を永らえる「快」を求めています。
人の無意識にはその行動に隠された肯定的意図があります。
人は安全に幸福になるために生き永らえるものです。
悪習慣が持つ肯定的意図に気づいて、その意図を尊重することが必要です。
悪習慣の行動そのものは、人に痛みをもたらすものです。
行動も自分にとって「快」となるものを選び直し、肯定的意図と行動の「快」を一致させることで悪習慣を変えることができます。
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