インナーゲームというのは、競技において実際競技者が行うアウターゲームに対する言葉です。
「インナーゲーム」の著者ティモシー・ガルウェイが競技者自身の心の中で行われる勝負のことをインナーゲームと名づけました。
ガルウェイは心の中のインナーゲームの結果が外側の実際のアウターゲームに現れるといいます。
自分の中にいる二人の「自分」
テニスコーチをしていた著者がプレーヤーを観察するうちに、心の内側で自分自身と会話しているのではないかと考えました。
ひとり、自分自身心の中で会話をしているのです。
話す自分と話しかけられる自分、自分の中に二人の自分がいるといいます。
プレー中「しっかりやれ」「いいぞ、その調子」「だめじゃないか」などと自分を批判したり、評価したり、命令したりしている自分がいます。
その自分をセルフ1と名づけました。
そのセルフ1に話しかけられるセルフ2がいます。
命令や指示によってプレーするセルフ2です。
セルフ1は意識する存在です。
セルフ2に指示を出し評価します。
セルフ1は「こうあるべき」と思い込んでいる「意識」、つまり価値観です。
セルフ2はセルフ1の命令どおりにプレーするものであり、自分がイメージしたことを実現する実行者です。
セルフ1のように主張はしません。
セルフ1は様々な価値観をもつ「意識」です。
セルフ2は「無意識」です。
セルフ2は、自分の肉体とその能力を持つものであり、自然な学習能力が備わっています。
そして、常にセルフ2はセルフ1に従う存在です。
ですから、セルフ1が「この相手に勝てる気がしない」と頭の中でつぶやいたら、セルフ2はそのネガティブな評価に合うパフォーマンスを実現することになります。
「勝てない」結果を実現します。
セルフ1とセルフ2の関係
試合に勝った選手が試合で最高の力を発揮しているときは、「覚えていない」、「何も考えていなかった」と言います。
最高の力が出ている試合は、プレー中、自分をコントロールしようとすることがなく、自己評価をしなかったと言います。
ただひたすらプレーに集中している状態であり、身体が自然と最適に動いてくれていたとプレーヤーは語ります。
指示や命令、批判をするセルフ1の口数が少なくなると、試合結果がよくなるといいます。
セルフ1が「こうしろ」「こうするな」「ダメだ」「なってない」などと頻繁にセルフ2に言っている時は高いパフォーマンスができない状況です。
しかし、セルフ1が静かになりセルフ2をコントロールしようとしなくなったら、ただひたすらプレーに集中している状態になります。
セルフ1はいろんな価値観を身につけている自分です。
今まで教えられてきたことや経験したことが規範となっています。
その自分の中の規範によって自分を評価します。
自分の中の基準で行動するように命令しますから、習ってきたとおりのことをセルフ2にさせようとします。
従って、制限された能力しか発揮できないことになります。
セルフ1は今までの条件付けられた考えの範囲内にいます。
ネガティブな思考に捕われているとしたら、ネガティブなイメージを自分自身に強いていることになります。
セルフ2は無意識ですから、イメージしたとおりのことを実現します。
「今、ここの自分」を実現します。
セルフ1がネガティブな思考を持っていたとしたら、ネガティブなイメージした通りのことをセルフ2が実現することになります。
例えば、緊張していて自分の意見がうまく話せないときに、セルフ1が「もっと明るくはっきり話さなければならない」とセルフ2に話したとします。
セルフ2はセルフ1の指示の通り実現しようとすると書きましたが、言われた通りにはできません。
ますます緊張してしゃべれなくなったりします。
「明るくはっきり話さなければならない」と強く思うということは、「理想どおりにできていない」という欠乏感を強く感じていることになります。
その欠乏感がセルフ2に伝わります。
そして「ガチガチに緊張している」状態である自分のイメージがセルフ2に伝わり、「緊張した、今、ここの自分」を実現し続けることになります。
自分が自分の能力を決めている
高いパフォーマンスを発揮しているときは、先ほども書きましたが、セルフ1が静かになってセルフ2のみが活動しているときです。
無意識にゆだねている状態のときです。
何も考えていないような状態、無我の境地とも言われます。
強い集中状態のときに最高の力を発揮できるということです。
セルフ1は様々な価値観を持った自分です。
セルフ1は言葉でセルフ2をコントロールしようとします。
評価し批判する存在です。
セルフ2はものごとを実現するエネルギーと効率的に効果的に成し遂げる叡智を持っています。
セルフ2にとっての目的は、全力を出し切ってプレーすること自体なのです。
自分を判断するクセをやめて自分自身に任せると、自身の最高のパフォーマンスを発揮することができるとガルウェイは言います。
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能力を規定するセルフイメージの変え方:W.T.ガルウェイ著「インナーテニス」より
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