こだわり~「誤解されている」
就業終了間近に、「今日中に頼む。」と上司が資料を持ってきました。
上司から「やりたくなさそうだね。」と笑いながら資料を渡された彼女。
彼女は「やりたくないなんて思ってないのに、心外!」とカチンときたそうです。
誤解されて悔しくて、その場では何も言わず我慢しました。
そして黙って残業をし、終わらせました。
仕事が終わってからも、彼女は「私は残業をやりたくないなんて思っていません。」と上司に本意を伝えたい、抗議したいと思ったと言います。
「自分の気持ちを言わないと気持ち悪い。」と思っていたようです。
そもそも誤解があったのでしょうか?
上司は彼女の表情を見て、感じた印象を口にしただけではないでしょうか。
それに上司には「みんな残業はイヤだろうな。」という先入観があったのかもしれません。
上司は半分冗談のつもりで言ったかもしれませんし、第三者からすると、目くじら立てて抗議するものではないように感じます。
部下がやりたくなさそうだと思ったとしたら、感じた印象ですから、訂正して欲しいといわれても上司の方も困るように思いました。
彼女が上司の言葉を聞いて「私の真意をわかっていない。」と憤慨することは、大げさに考えすぎなのでは?と思ってしまいます。
誤解されたことが行動であったら、訂正を求めるのは当然といえます。
やっていないことをやったと誤解されていたら、反対にやったことをやっていないと判断されて不利益を被ることは不本意です。
行動面の誤解を解くことは意味があると思います。
しかし、相手の持つ印象を変えて欲しいと要求することは相手の感情に抗議することですから、適切ではないように思われます。
実際、上司の誤解を解きたいということで後日上司に抗議したとしても、上司は言ったことを忘れているかもしれません。
先ほど書いたように、ただ冗談ぽく言っただけかもしれません。
もし上司に抗議したら、「そこまで重要なことなのか?」と首をかしげるかもしれません。
「彼女はそんなところにこだわる人なんだ。」と面倒な人物に思われ、引くかもしれません。
また、「これから気軽に頼めないな。」と思われるかもしれません。
上司の認識と彼女自身の認識が違っていたと思い込んで相手に抗議していたら、ぎすぎすした人間関係になってしまうのではないでしょうか。
「こだわり」が教えてくれるもの
なぜ、彼女は上司の誤解を解きたいと強く思い、抗議しないと気持ちが悪いと思うのでしょうか?
彼女の白黒はっきりさせたいという強い価値観がそうさせるのかもしれません。
彼女はものごとをはっきりと白と黒に分けないと気がすまない性格なのかもしれません。
しかし、ものごとは白か黒に分けられることばかりではありません。
グレーの部分もあります。
グレーでも白っぽいグレーもあれば黒っぽいグレーもあります。
人間関係はあいまいにしておくことでバランスが取れるということがあります。
何でも白黒はっきりさせなくてもいいのではないでしょうか。
こだわりを手放して行くと心が軽くなっていきます。
人間の脳はものごとを一般化しやすい特徴があります。
脳にとっては、単純に考えたほうがいいのです。
1か100か、白か黒か、一般化して考えたほうが脳は楽なのです。
人はそれぞれ、いろいろな価値観を持っています。
良い ⇔ 悪い
正しい ⇔ 間違い
美しい ⇔ 醜い
優秀 ⇔ 劣等
卓抜 ⇔ 平凡 …
価値感は思い込み、こだわりといえます。
思い込みやこだわりが強いとその価値感に縛られてしまいます。
価値観に合わないものに遭遇した場合、ネガティブな感情を感じます。
多くの強いこだわりを持っているとネガティブな感情に捉われる機会や時間が多くなると言えます。
こだわりを手放すには、自分の価値観を疑ってみることです。
自分にとって有益ではないこだわりは、手放したほうがいいのではないでしょうか。
先ほどの彼女が上司に笑ってその場をやり過ごすようなお芝居ができたら、気持ちに余裕ができるのではないでしょうか。
価値観に合わない自分の中の強いこだわりは、強い違和感、強いネガティブな感情を伴って現れてきます。
こだわりを少しずつ手放すことでネガティブな感情を感じることがなくなり、気持ちが軽くなります。
「こうでなければならない」と考えるより、「そうであってもいいし、そうでなくてもいい」と許容範囲を広げられれば、いらいらやモヤモヤが少なくなるのではないでしょうか。
お読み頂きありがとうございました。