「スタンド・バイ・ミー」を見て
映画の冒頭、大人になった主人公ゴーディが、カフェで「弁護士がナイフで刺され、亡くなる」という新聞記事を見つけます。
その弁護士は、少年の頃、忘れられない冒険の旅を一緒にしたメンバーの一人だったのです。
故郷に車を走らせ、12歳の頃4人一緒に行った冒険旅行を回想していきます。
亡くなった弁護士は友だち4人の1人、クリスでした。
スクリーンに広がる世界は1950年代のアメリカの田舎町。
映像と音(せりふ、音楽)がリアル感を持って、感情に迫ってきます。
エンディングの ” Stand By Me ” を聞きながら、エンドロールを見ているうちに「これが人生なんだな」と、涙がすぅーと流れました。
ゴーディ以外の男の子たちは、行儀のいい子達ではないようで、家庭環境も恵まれているとは言えません。
ゴーディの父親は「兄の友達と比べて、お前の友達は素行が悪い。」と言い、ゴーディの交友関係を好ましいとは思っていないようでした。
なぜ、ゴーディが「秘密基地」でタバコを吸ったり、トランプで遊ぶ子達と一緒にいるのか?と考えました。
たぶん、家庭の居心地が悪いからなのでしょう。
コーディは、父親から愛されていないと思っていました。
私たちは、子供時代に、親や教師や周りの大人たちから、心無いことを言われることがあります。
理不尽だと思う扱いを、受けたりすることもあります。
たぶん、彼らも周りの大人たちから、優しくない扱いを受けてきたのでしょう。
心に満たされないものを持つ4人が、徒歩で野宿をしながらけんかしたり、仲直りをしたりおしゃべりをしたり、ふざけあったりして目的地に向かって行きます。
そして、彼らの冒険が終わり、翌朝、町に帰ってきました。
2日ほどの冒険でしたが、行く前より帰ってきた彼らは成長しているなと、感じられました。
彼らの表情には、やりとげたという達成感が表われているようでした。
4人の個性
・ゴーディ
両親との3人家族。大学生の兄がいましたが、鉄道事故でなくなりました。
兄はアメフトで活躍する将来を嘱望された人物。
両親の期待も大きかっただけに、兄を失った両親の失望は大きかったでした。
兄は弟思いのいい兄でした。
コーディは物語を好む内向的な性格で、両親から愛されていないと思っていました。
・テディ
テディの父はノルマンディーの戦争の帰還兵で、精神を病みテディを虐待していました。
コーディは、酷い扱いを受けても父を愛しているテディの気持ちがわからないと言います。
でも、テディは父を誇りに思い、愛しています。
・バーン
バーンは小太りの臆病な性格。兄は不良少年グループに入っており、素行がよくありません。
・クリス
クリスの家庭は、貧しく世間から信用のない家庭であるといわれています。
兄は不良で、父も評判が悪いのです。
クリスは、コーディの物語を作る才能を評価し、将来作家になることをすすめます。
クリスは、物事の本質を見る力があり、行動力のある賢い子です。
野宿している時、コーディはうなされて目が覚めるシーンがありました。
そばにいたクリスに夢の話をします。
夢の中で、兄の葬儀中、父から「お前が死ねばよかったのに」と言われたのです。
「父から愛されていない」と泣くコーディ。なぐさめるクリス。
コーディの話を聞き終わったクリスが、話を始めます。
給食代が無くなった事件がありました。
クリスは、クラスのみんなから給食代を盗んだと非難されました。
クリスは、反省し、教師に返却しました。
ところが、教師はそのお金で茶色の水玉模様のスカートを買ったのでした。
そのスカートをはいて教壇に立つ姿を見て、クリスはショックを受けます。
「世間的に信用のない家の子供である自分が、何を言おうと信じてもらえないのがわかっていたから、何も言わなかった。」と、クリスがコーディに話します。
悔しいとクリスは泣き、なぐさめるゴーディでした。
成長した彼ら
不良グループのエースは、コーディら4人に帰れと言います。
しかし、それに従わないクリス…。
その時、クリスは出発前のように理不尽な仕打ちには従わないと、強い気持ちを持っていました。
不良グループがコーディの兄の形見のヤンキースの帽子を力づくで奪った時のようにはしないと、決めたのでした。
不良グループのエースがクリスに向かってナイフを向けた時、ゴーディは空中に拳銃を発射しました。
コーディもクリスと同様、理不尽な要求には従わないと決めたのです。
クリスを守るため、コーディは、本気でエースに拳銃を向けました。
町に帰ってきた4人は、それぞれ家路につきます。
クリスはコーディに独り言のようにつぶやきます。
「このまま一生この町にいるのだろうか。この町から出られないのだろうか。」と自分の将来を絶望視します。
それに対し、ゴーディは「自分と一緒に進学組にいこう。」とすすめます。
そして、二人は進学組に進み、勉学にはげみました。
ご覧になってない方は、実際にご覧になることをおススメします。
成長して行く少年たちの姿が印象的でした。
最後に
私たち大人は、子供の心を考えず、酷い言葉を投げかけたり理不尽なことをすることがあります。
子供たちは、大人たちの醜い部分を見たり、酷い扱いを受けたりします。
同じように大人たちからひどい扱いを受けた子供たちは、共感し合います。
共感することで、心が癒されていきます。
心に傷を持っていても、わかってくれる人がいると、救われます。
子供時代に傷つく体験をした人は、すべてを受け入れて、自分の中の「引き出し」にしまいます。
いいところも悪いところも、全部自分なんだと納得しています。
様々な矛盾を抱えながらも、全部それを飲み込んで、真摯に未来を切り開いていった主人公たちの姿に人生を思いました。
自分の人生の舵取りをするのは、自分なのだと改めて感じました。
お読み頂きありがとうございました。